高血圧の治療薬に配合剤というものがあります。配合剤は一つの錠剤に二種類以上の成分が入った薬です。一粒で二度おいしいという訳です。

高血圧で治療中の患者さんは、二種類以上の薬を服用している事が珍しくありません。場合によっては、なかなか血圧が下がらないという理由で、4-5種類の薬を服用している事もあります。配合剤を使う事で服用する薬の数が減り、負担を軽くしましょうというのが主旨です。

複数の製薬会社から配合剤が発売されており、各社ともに力を入れているようです。組み合わされる成分としては、次の2パターンが主流です。

①カルシウム拮抗薬(血管を広げる薬)+ARB(ホルモンに作用する薬)

 製品名:アイミクス、アテディオ、エックスフォージ、ミカムロ、レザルタス、ザクラス(すべて配合錠)

②ARB(ホルモンに作用する薬)+利尿剤(尿量を増やす薬)  

 製品名:エカード、コディオ、プレミネント、ミコンビ、イルトラ(すべて配合錠)

各製薬会社より、実に多数の配合錠が発売されています。しかし、私は患者さんに処方したことがありません。毎日、20~30人の方に高血圧の薬を処方していますが、配合錠は全く使っていないのです。また、他の医療機関からの紹介で受診する方で、配合錠を使っている場合がありますがごく稀です。

「飲む薬の数が減るので、配合錠を使った方が良いのではないか」という意見もあるかと思います。しかし、配合錠を使わないことには理由があります。

①調整が難しい

血圧というのは一定ではありません。同じ人でも、時間帯や季節、体調などによって血圧は変動しているのです。特に季節変化の影響は大きくて、「夏は低くなり冬は高くなる」という方が大勢います。その血圧の変動に合わせて処方する薬を調節する必要があります。つまり、「夏には薬を弱くして、冬には強くする」という訳です。二種類以上の高血圧治療薬を服用している場合は、その一剤だけを増減したり、休薬することもあります。もし配合剤を使用していると、この細かい調節ができません。

②コストが高い

マクドナルドではセットにすると安くなりますね。配合錠も2剤を別に処方するよりは安くなりますが、その額はごくわずかです。それも先発品(ジェネリックでない薬)を2剤分の値段ですので、ジェネリック薬を使った場合に比べると高くなります。実際のところ、カルシウム拮抗薬はそのほとんどがジェネリックになっていますので、配合錠よりも2剤を別に処方した方が安くなるケースが多いのです。

このように、あまりメリットの無さそうな配合錠ですが、一体何のために配合錠は存在しているのでしょうか?それはズバリ、「製薬会社のため」です。先発品を開発し販売している大手製薬会社は、ジェネリック薬に市場を侵食されており経営が大変なのです。配合錠を出すことで少しでも市場を取り戻すことができればと、考えているのだと思います。しかし、医師の側からすると「使いにくい薬」ですので、あまり普及していないという訳です。

ちなみに、カルシウム拮抗薬と高コレステロール血症治療薬のスタチン類をくっ付けた、カデュエット配合錠という薬も存在するようです。もう何のために作っているのか、謎ですね。ピコ太郎のPPAPばりの合体技です。